昨今、電気料金の高騰が話題になっています。節電対策をお探しの施設や企業も多いことでしょう。
このような状況で、節電ソリューションとして「電子ブレーカー」が注目を集めています。電子ブレーカーは、本当に大きな節電効果をもたらすのでしょうか。
本記事では、電子ブレーカーのメリットやデメリット、類似したソリューションとの比較を紹介しています。節電対策をお考えの企業・施設の担当者様は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
電子ブレーカーとは?
一般に「ブレーカー」とは、大きすぎる電流を検知し事故を未然に防ぐ装置です。中でも電子ブレーカーは、一般的なブレーカーよりも精密に電流を測定できる機能があるようです。精密に電力を測定できることで、最適な電力プランに切り替えることができ、消費電力使用量の最適化に繋がるという仕組みになっています。
電気使用量 → 消費電力使用量
この記事では、電子ブレーカーがより正確な電流量の測定が可能であることの理由について、電子ブレーカーの仕組みや一般的なブレーカーとの違いをなど含めて解説します。
電子ブレーカーの仕組み
電子ブレーカーが精密に電流を測定できる理由は、CPU(中央処理装置)が搭載されているためです。CPUとは、コンピュータにも搭載されているデータを処理する中枢機関で、電子ブレーカーのCPUは、電流量だけでなく電流がどれだけの時間流れたかを計測できます。そのため、使用している電気回路の規模がより正確に把握できるのです。
電子ブレーカーを使うと「30アンペアの電流量が、3分流れたらブレーカーを落とす」といったことが可能です。30アンペアの電流は2分流れただけではシステムへの影響はありませんが、3分を超えると悪影響が出てくるため上記のような設定をします。
CPUが電流量だけでなく、時間も同時に測定することで、電子ブレーカーは精密に電気回路を観測できます。
一般的なブレーカーとの違い
一般的なブレーカーは、「電気回路が許容する最大電流量」のみを検知します。
ある電流量を超えると、その電流の熱によって湾曲するように作られているのです。これは、異なる膨張率を持つ金属が、下の図の様に張り合わされているためです。この湾曲によって、異常な量の電流量を検知します。
一般的なブレーカーでは、「30アンペアの電流量を超えると無条件でブレーカーを落とす」という仕組みです。
「30アンペア」という数値自体も、金属の湾曲によって間接的に測定しているため、直接電流量を測定する電子ブレーカーに比べて正確ではありません。
このような電子ブレーカーと、一般的なブレーカーの仕組みを下の表にまとめておきます。
電流の測定 | 時間の測定 | 正確さ | |
一般的なブレーカー | 〇 | × | △ |
電子ブレーカー | 〇 | 〇 | 〇 |
電子ブレーカーは「節電」するわけではない
「節電」とは、消費電力使用量を削減することを指します。一方、電子ブレーカーでは詳細に測ったデータをもとに電気料金プランを変更し、電気料金を削減しています。この際、消費電力使用量は変わりません。
ここからは、電子ブレーカーが電気料金の削減に寄与する理由を詳しく解説していきます。
プラン変更によって料金を削減する
電子ブレーカーは、電力会社と当該施設との基本料金の契約プランを変更することによって電気料金を削減します。契約プランは、「負荷設備契約」と「主開閉契約」の2つです。下に、以下に概要を記載します。
負荷設備契約(一般的なブレーカーを用いた場合に多い契約) | 主開閉契約(電子ブレーカーを用いた場合の契約) | |
特徴 | 施設で使用する機器の最大電力量で契約 | 施設のメインブレーカー容量に応じて契約 |
この契約が有利な状況 | 24時間すべての機器が稼働している場合 | 稼働しない機器が多い場合 |
電子ブレーカーは、「負荷設備契約」→「主開閉契約」とプラン変更をすることによって電気料金を削減しています。「主開閉契約」では、容量が小さいメインブレーカーを採用すると電気料金が少なくなります。
しかし、一般的なブレーカーで「主開閉契約」を採用し、小さな容量のメインブレーカーを使うと、すぐに停電が起こる可能性があります。通常、電流の熱を基準に、大まかな測定をしているため最適なブレーカーを選ぶことが難しくなっています。
一方、電子ブレーカーは正確に電流量を測定しているため「必要最低限の容量のブレーカー」を選定できます。電子ブレーカーが電気料金削減に繋がる理由にはこのようなものがあります。
基本料金を削減する(電気料金は削減できない)
電気料金の内訳には、以下の4つがあります。
- 基本料金…使用量に関わらずにかかる、最低料金
- 電力量料金…使用量に応じてかかる料金
- 燃料費調整額…電力会社が燃料調達の際に必要とする料金
- 再エネ賦課金…再生可能エネルギーを促進するための費用で、太陽光発電の増設等にあてられる。
電子ブレーカーは、「1.基本料金」を削減します。「負荷設備契約」から「主開閉契約」への契約変更は、基本料金プランの変更であることがポイントです。
「電子ブレーカーによって基本料金が30%減少」というのは、電気料金全体を30%下げたわけではありません。これら4つの内訳の割合によって、電子ブレーカーの効果は左右されます。電子ブレーカーは、4つの内訳のうち「基本料金のプラン」を変更することで電気料金を削減しているのです。
電子ブレーカーでの電気料金削減の事例
電子ブレーカーでの具体的な電気料金削減の事例を2つ、簡潔に紹介します。
大手カー用品店の店舗では、導入前には100万円の電気料金がかかっていました。
そして、電子ブレーカー導入後の年間削減額は約14万円、割合にして14%の削減を達成しています。担当者によると、電子ブレーカーを導入することで、本店舗は契約ブレーカー容量を59kW→49kWと変更したとのことです。
広島県の中規模マンションの事例も見てみましょう。
当該のマンションでは、契約ブレーカー容量を12kW→5kWとすることにより、年間約9万円の削減に成功しています。電子ブレーカーの導入にかかる費用は30万円程度です(条件により変動)。
上記の事例だと、導入後2〜3年で初期費用を回収できる計算になります。
電子ブレーカーのメリット・デメリット
電力使用量削減ソリューションを導入する必要のある企業・施設においては、複数の商品を比較検討し、最善の意思決定をする必要があります。そのため、各商品のメリット・デメリットを知ることは非常に重要といえるでしょう。
ここからは、電子ブレーカーのメリット・デメリットについて解説していきます。
電子ブレーカーのメリット
メリット | 解説 |
電気料金が安くなる | 契約プラン変更によって、場合によっては多くの電気料金を節約できる |
突発的な停電が起こりにくい | 通常のブレーカーと異なり、CPUで制御しているため、故障や誤作動が少ない |
電子ブレーカーのデメリット
デメリット | 解説 |
設置リスクが大きい(設置時には停電作業が必要) | 停電作業に伴い、機器の故障や誤作動、機会損失につながる可能性がある |
効果が小さい場合もある | 全機器が同時に長時間稼働する場合、効果が小さくなる |
悪徳業者も存在する | 導入に際して100万円を超える金額(通常は30万円程度)を請求する業者もある |
電子ブレーカーは設置時に停電作業が必要となるため、施設の稼働停止による機会損失リスクがあり、企業で導入するには高いハードルになります。導入先の企業や施設種類によっては、大きな損害となる可能性もあります。
設置リスクのある電子ブレーカーの導入には慎重な検討が必要です。その一方で、リスクのない電力使用量削減ソリューションとして「パワーガード」が企業から注目を集めています。
電子ブレーカーとパワーガードの違いとは?
「パワーガード」は近年開発され、注目を集めている消費電力使用量削減ソリューションです。
この「パワーガード」は他のソリューションとは異なり、リスクなしで導入することができます。設置のプロセスで、一度も停電作業を必要としません。
電子ブレーカーはプラン変更によって「基本料金」を削減します。一方、パワーガードは消費電力使用量を減らすことで「電力量料金」を削減するソリューションです(電気料金の区分けについては上の「電子ブレーカーは「節電」するわけではない」の章にて解説しています。)。
消費電力使用量を削減する効果も高く、大手アミューズメント施設が導入して8%もの消費電力使用量を削減した実績もあります。
電子ブレーカーとの併用も可能です。
電子ブレーカーでは「基本料金」を、パワーガードでは「電力量料金」を削減することで、さらなる効果が見込まれます。
パワーガードに興味のある企業や施設の担当者様は、以下記事も合わせてご覧ください。
▶パワーガードとは|200社以上が導入する節電ソリューション
まとめ
本記事では、電気料金削減ソリューションである「電子ブレーカー」について解説してきました。電子ブレーカーは、電流量を精密に測定することで、適切なプラン変更を行うことが可能です。電気料金の契約プラン見直しを正確に行いたいという事業者様は検討してもよい製品だと思います。
一方で、電気料金への対策は、施設の規模が大きいほど、重要なミッションとなり、導入時のリスクなどは極力排除しなくてはなりません。そのような中で、低リスク・低コストである「パワーガード」の導入が、大手企業や施設を中心に進んでいます。
消費電力使用量の削減に苦心されているご担当者様も多いかと思います。電子ブレーカーとともに、ぜひパワーガードをご検討ください。
▶パワーガードとは|200社以上が導入する節電ソリューション